- 作者: オノ・ナツメ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2006/10/30
- メディア: コミック
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今日はそれがなくて、本棚を見返して語りたい漫画はどれかな、と
考えたら目が止まったのです。
オノ・ナツメの漫画としては異色というか、
根底にはオノ・ナツメらしさがあるので、異色ではないのですけど、
読んだ後の印象が、他の漫画とは違うなと感じます。
イアンという主人公の非常に稀で、決して幸せとは評価できない出会いと繋がりの物語。
たぶん、これ読んだ人は、浮かばれないな、って思うんじゃないでしょうか。
これでもかってイアンの人生を落としに落としていく内容なんですが、
今日改めて読み返してみて、一番重要なのは、
姉と「ママ」の存在なんだよなぁ。
イアンは、本当にはたから見てると、いや、第三者が勝手な評価をくだすと、
不幸なやつとしか言えないけれど
子供の頃、唯一「繋がってる」と感じられた姉さんの存在と、
所在がわからなくなった姉さんを探す旅の途中であった女性「ママ」は
イアンにとって特別な存在で、
その二人との出会いと繋がりを大事にしたイアンは、実は浮かばれる人間だったんじゃないかって
読み返して思ったのです。
確かに、イアンの最後は壮絶で作中でも「劇的」と表現されてしまうほど、
またしても不幸な終わり方で
イアン自身があのとき幸せだったとは私も思わない。
でも、この物語をただ重いとか、深いとか、切ないとか、それだけで終わらせてしまうのは陳腐な気がして、
ものすごい流れの中で、静かに、それでも強く流されるわけでもなく、抵抗するわけでもなく、
ただそこにいて、そこで生きてきたイアンは、不幸そうには見えないのです。
それは、ひょうひょうとしたイアンの性格と、姉さんと「ママ」の存在がそうさせるのです。
これは、本当は幸せな物語かもしれない。
そんな風にも思わせてくれるオノ・ナツメはすばらしいな、と思ったのでした。